2020/03/23

燃えてしまったお宅の前を、
朝晩、火事の前も後も変わらず通っていました。
駅までの、いつもの通り道だったのです。
見ると、両脇の戸建ても多かれ少なかれ被害を受けてしまったようでしたが、
燃えてしまったお家も元はどんな風だったか、
ついこの前までそこにあったはずなのに、杳として思い出せないのでした。

場所は住宅街、
多くは70~80年代に建てられたものでしょうか、
その当時のものとしてはごく標準的な大きさ、
様式の戸建ての家が軒を連ねる一帯です。
往来もそれほど多くなく、大通りから少し裏に入った静かな町内です。
昨日も申し上げましたが、当初、
「ご主人は行方不明」
とされていました。
仕事を終え少し遅くなってしまった帰り道、
ワタクシ、焦げて炭化した柱の陰を見上げながら、
ご主人はどうされたのだろうかと、ぼんやり考えておりました。
と、その時突然、背の高い男性が一人、
物陰から、ワタクシの行く道の前をふさぐように飛び出してきたのです。
「うおわっ!」・・・(。-∀-)
こういう時意外に、
カワイク「きゃー」とか出ないもんですよ。
ワタクシ野太い声で、そう叫んでしまったのです。
何事かと思われたのでしょう、
近くのお家の二階の窓が、ガラガラッと開いた音がしました。
は、恥ずかしい(*ノωノ)。
「すいません、ご近所の方ですか」( ゚Д゚)はっ、見ると、少し離れた街頭の灯りに照らされて、
「お巡りさん」がそこに立っていました。
なんだー、警察の人かーε-(´∀`*)ホッ。
「いつもここ通られるんですか」あ、近くなのでー。
「ここのご主人、ご存じですか」新聞で見たかもー。
「お知り合いですか。行方不明なんです」いえいえ、ただ通り道のお宅というだけなんでー。
一度、洗車をしておられるのを見かけた気もしますが、
この家の方かも定かではー・・・
「え、見たんですか。ここの家の人!」いえ、ですからー。
初めの内こそ、真剣に答えていたものの。
矢継ぎ早に質問を受けている内に、
ワタクシ、何だか胃の辺りがぞわぞわ、嫌な予感がして参りました。
段々答える口数も少なくなって、首をかしげたりするだけに。
と、さすがにそれを察してか、
「お巡りさん」がポケットから小さな手帳をやっと出すと
(そう、ここでやっと。ずっとメモも取ってないよね、この人・・・)、
「ここに住所と電話番号、名前を書いて下さい。
後日お話を伺うかもしれません」とな・・・?
ワタクシ、格好から、
制服と帽子のいかにもな格好から、
この人の事をお巡りさんと勝手に思っていましたが・・・
警察手帳も見てないし、今、手渡されたのだって、
普通の、ごくフツーの黒革の手帳。
そういえばさっき、この人いきなり物陰から出てきたけれど、
辺りに自転車の一つも見当たらない。
徒歩で来たの?どこから?
っていうかそもそも、こんな遅い時間に、道端で通行人を聴取?
しかも、結局なんの引き出しももってない事判明のワタクシに、
個人情報聞くの?
警察って、いつもこういう事するの?
・・・(。´・ω・;)アレー?
こっそり振り返ると、
さっきワタクシの声に反応したお宅の窓は、
まだそのまま、開いたまま。
部屋から灯りがこうこうと漏れています。
ワタクシ、最悪その家に駆けこむべく目検討をつけながら、
手の平の中の手帳に、適当な住所等々を書き込みました。
万が一嘘とばれたら、
間違えて書いた、暗い道端だったのでと言おうと心に決めました。
そうなんですよ、辺り、暗いんです。
こんなところでいきなり立ち話なんて(ステーキかっ)、
そもそもおかしいから!手帳を返した後、
ワタクシ、すたこらさっさとその場から立ち去りました。
腕時計をチラ見する小芝居をしながら、
突き当りの少し大きな通りまで、小走りで急ぎました。
角を曲がる時、ちらっと振り返りましたが、
「お巡りさん」の姿は見えなくなっていました。もちろん見間違いかも、
暗かったから、
うん、もしかしたら見えなかっただけかも・・・
確かその次の日だったと思うのですが、
行方不明とされていたご主人が発見されたという報道を見ました。
なんとご遺体は、敷地内にあったのです。
人様のお家に大変恐縮なのですが、そちらはさほど広大な敷地のお宅ではなく、
瓦礫等あっても、も少し早く発見できなかったのかと思わなくもないのですが、
まぁそういうワケだったのです。
ワタクシ、毎日ご遺体の前を、すぐ横を通って歩いていた事になります。
あの「お巡りさん」と話していたのも、その辺りで・・・
今となっては知る由もありませんが、
あの人は本当に警察の方だったんでしょうか。
ワタクシが書いた、不思議な番地の住所を探して、
そこを訪れようとした人はいるのでしょうか。
余談でした。
明日もがんばります。

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阿子島さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

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